双極性障害は「軽躁症状」や「躁症状」がみられる躁状態と「抑うつ症状」がみられるうつ状態を繰り返す症状です。症状や治療法を知ることで、ご本人だけでなく、ご家族や友人が症状に気付いて医療機関での治療に繋がることができるように紹介していきます。

はじめに

みなさんの周りの人に「突然お金をいっぱい使ったと思ったら、家から一歩もでなくなった。」という方がいらっしゃいませんか?もしくは、ご自身が経験されたという方はいませんか? 浪費などの躁状態、意欲低下などの抑うつ状態がみられることは、双極性感情障害(躁うつ病)が疑われます。 今回は、双極性障害の症状や治療法の紹介を行います。また、ご自身や周囲の人達のなかで双極性障害の症状があるのではないかとを疑い、治療が必要だと想定される場合の行動についての助言を行っていきます。

双極性障害の症状

双極性障害の症状の特徴として、「軽躁症状」と「躁病症状」による躁状態と「抑うつ症状」の状態を繰り返していく症状があります。ここでは、軽躁症状と躁病症状、抑うつ症状について紹介します。

①軽躁症状

気分の高揚、多弁、睡眠時間が短い、考えが次々と思い浮かぶ、注意散漫、衝動的、活動的、過剰な投資や買い漁る行動、怒りやすくなる等といった状態が4日以上続く場合は、軽躁症状(双極II型障害)であるとされています。 軽躁症状の方は客観的に見ると問題のない言動で日常生活を過ごしているように見えます。しかし、家族や友人から見るといつもの言動と違うのではないかという判断ができる状態になっています。

②躁病症状

気分の高揚、多弁、睡眠時間が短い、考えが次々と思い浮かぶ、注意散漫、衝動的、活動的、過剰な投資や買い漁る行動、怒りやすくなる等といった状態が1週間以上続き、日常の仕事や社会的活動が妨げられるほどの重症度がある時場合は、躁病症状(双極I型障害)があるとされています。 躁病症状では、「私はすごい人間だ」「私はこのなかで一番偉くて権力を持っている」等の誇大妄想の症状が出てきます。周りの人達に迷惑をかける、人間関係をかき乱すような言動をすることも少なくありません。

③抑うつ症状

鬱々した気分が続く、悲観的な感情、興味や意欲の減退、無気力、食欲がない、精神的に疲れやすい、身体がだるい、不眠、自責感、自殺念慮、発言や行動ができない、思考力、記憶力の低下、涙もろい、身だしなみに無頓着、性欲がない等の症状が抑うつ症状として出てきます。 双極性障害は①・②の躁状態と③の抑うつ症状が繰り返して出てきます。症状の期間には個々の症状で期間が様々です。 抑うつ症状や軽躁症状、躁病症状でもない寛解期を含めて約半年単位で症状に変化がある方もいれば、数年単位の方もいます。また、混合性の症状として、1日のような短期間で抑うつ症状と軽躁症状もしくは躁病症状を急速な変化で繰り返していくになることがあります。 また、軽躁症状もしくは躁病症状と抑うつ症状の変化の時期に、気分の低下や不安が増している等の抑うつ症状と考えが次々と思い浮かぶ軽躁症状もしくは躁病症状の症状が混合する「混合状態」の症状になる場合があります。 双極性障害の方が医療機関に受診する時は以下のケースが多いです。
抑うつ状態の時に自分から、誰かに勧められて受診をする場合
抑うつ状態になってしまい、日常生活に支障が出てきた時に受診に繋がることがあります。その時の症状を診るだけでは「うつ病」と診断される可能性があります。 診察時に日記等による自身の行動記録や家族や友人からの話等主治医が客観的に判断できる場合は、双極性障害である診断できることがあります。
躁状態で興奮した状態の時に家族や友人に連れて来られた場合
軽躁症状や躁病症状の時点だけでは「自分は病気じゃないから通院する必要はない」と考えてしまうことが少なくありませんので、自分自身で医療機関へ受診に繋がることが難しい状況になってしまいます。家族や友人達からの説得に応じずに受診してくれない場合は無理矢理連れて来られて受診をすることも少なくありません。無理矢理連れて来られて受診すると継続した治療を本人が拒否することも考えられます。出来れば本人に受診する意思が持てるようにすることが望ましいですが、本人がどうしても受診を拒む場合は医療機関に相談をしてどのように関わっていくことが良いのか、状況に応じて医療機関に関わってもらえるのかを確認しておくと良いでしょう。

双極性障害の治療法

双極性障害の治療は薬物療法と精神療法で行います。薬物治療、精神療法を併用して行なうことで症状の回復や症状の再発予防に向けて効果的な治療を行うことができます。

①薬物療法

気分安定薬と非定型抗精神病薬を中心に使用していきます。双極性障害の症状によって用いられる薬の種類を調整していきます。躁状態(軽躁症状と躁病症状)の時には気分安定薬と非定型抗精神病薬を使用していきます。抑うつ状態の時は気分安定薬と非定型抗精神病薬を使用していくことになります。不眠症状がある場合は睡眠薬と非定型抗精神病薬を使用します。症状によって使用する薬の種類を調整することで症状が安定するように治療を行っていきます。 薬物治療には副作用があることを知っておきましょう。服薬する薬の種類によって副作用は様々ですが、下痢、食欲不振、のどが渇く、多尿になる、手の震え、ふらふらして歩けなくなる、意識が朦朧とする等が紹介されています*¹。主治医と相談をしながら服薬調整を定期的に行うことが大切になります。

②精神療法

認知行動療法
抑うつ症状や躁状態を乗り切るために物事を客観視して肯定的に捉える考え方ができるように練習を行います。 抑うつ症状がある時は否定的な認知、躁状態では自分のことを過大視する認知の状態になります。客観視をすることで日々の過ごし方から自分自身の考え方の癖を見つけていくことで気分の変化による思考や行動パターンの変化に注目することで症状による行動の影響を最小限にすることができるようになります。
対人関係・社会リズム療法
家族や職場、友人等との人間関係を回復させて、対人関係の問題によるストレスを解決して再発を防ぐ、日々の生活リズムを整えるために行う精神療法です。 決められた服薬ができない、ストレスフルな状況にある、生活リズムの乱れが生じていること等で抑うつ状態や躁状態の症状がある時に対人関係・社会リズム療法を行うことで症状を安定させることができるようになります。 治療は薬物療法と精神療法等の医療機関だけでなく、ご自身の日常生活の過ごし方が治療との関係性が深く関わってきます。
自分を知ること
自分自身を知ること、自分の長所や短所、コミュニケーション力という人間性や症状との付き合い方について知ることで日常生活を自分のペースで、無理しない様にすることができるようになります。
生活リズムを整えること
睡眠時間を整えるだけでなく、朝の起床から夜の就寝までの生活リズムを決めて実行することが大切です。医療機関から処方される薬を定期的に服薬続けるためには生活リズムを整えておかないと服薬を忘れてしまう原因にもなります。 また、睡眠時間が短くなると症状が再燃する可能性もありますので注意しておきましょう。逆に、睡眠時間が長くなった時も自分のエネルギーを消費しないまま1日を終えてしまうことで睡眠に影響が出ることがあるので注意してください。
治療目的を明確に自分で把握しておくこと
自分自身が医療機関での治療をどうして続けているのかを把握しておきましょう。治療目的が分からないままでは継続した治療の必要性を感じることができなくなってしまい、治療が中断してしまいます。治療が中断してしまうことで症状が悪化する可能性があります。躁状態の方は「自分は病気ではない」と考えることがあり、治療が中断してしまう可能性があるので注意が必要です。 症状の回復という大きな目標設定も大切ですが、個々の症状の変化等の小さな目標を定期的な通院時に主治医と確認してみると良いでしょう。
ストレスとの付き合い方を知る
ストレスの蓄積が双極性障害の症状を出現させる原因の1つであると言われています。日頃の生活で生じてしまうストレスとどのように付き合っていくのか、ストレスを解消するためにはどのような行動をするのが良いのかを自分自身で知っておきましょう。 気分転換の方法を見つけることやストレス要因がある環境から離れることができる場合は離れてみることを行動する等をしてみましょう。主治医と相談しながらストレスとの付き合い方について確認をしていくことで治療に反映することができるようになります。
治療の経過を焦らない
症状を早く治したいと焦る人は少なくありません。焦ってしまうことで焦燥感が出現してしまい、症状の回復に時間がかかる、治療を中断してしまう可能性も考えられます。 双極性障害は抑うつ症状と躁状態による症状を繰り返していきます。症状の期間の長短も個々の症状で様々です。薬物療法と精神療法等を継続することで日常生活を営むことが少しずつ出来るようになっていきます。焦らないで定期的に治療を続けていくようにしましょう。
医療、福祉に関する制度の活用
治療を続けていくことで費用がかかってしまうことがあります。みなさんの経済状況から支払いが難しくなる方もいます。治療費が払えないから治療しないのではなく、医療や福祉の制度を活用することで治療を続けていくことができます。 高額療養費制度、自立支援医療制度といった医療費に関わる制度、精神保健福祉手帳や障害者年金、生活保護制度等の生活に関わる福祉の制度、デイケアや就労継続支援、就労移行支援や就労定着支援等の日中活動に関わる社会資源等を活用することができます。 医療や福祉に関する制度の申請、利用に関しての相談は行政機関等で相談も出来ますが、医療や福祉に関する制度の利用申請の際に主治医の診断書が求められることが多いです。まずは、医療機関の主治医やスタッフ、ソーシャルワーカーに医療や福祉に関する制度を利用したい旨を相談してみましょう。

双極性障害かな?と思ったら

ご自身を振り返って、「双極性障害かな?」と考えた場合は医療機関への受診をおすすめします。現在、うつ病等の他の精神疾患で治療をしていても、双極性障害かな?と考えることがあれば診察時に主治医に相談をしてみてください。主治医が日記等で客観的に判断できる記録がある場合はどうして双極性障害であると考えたのかという背景を掴むことができて治療に関係付く場合もありますので、受診時に持参して主治医に相談してみてください。

ご家族や友人のみなさんへ

抑うつ状態になっている時に励ます行為や気晴らしになる行動をするのは控えるようにしてください。励ましや気晴らしの言動で抑うつ状態が改善されることはありません。逆に励ましや気晴らしの言動がきっかけで精神的に追い詰めてしまうことになってしまう可能性があるので気をつけてください。 軽躁症状や躁病症状の時に普段と違う言動をしていることを客観的に気付かせることができるのはご家族や友人等の関わりが大切になってきます。軽躁症状や躁病症状がある時に軽躁症状や躁病症状の行動をしていると自分自身で気付くことは難しい状況です。「自分は元気になった」、「自分は病院に行く必要は無い」と話をするかも知れません。 客観的に振り返る機会を作ること、治療を続けていく必要性を伝えてあげてください。治療を中断してしまうと軽躁症状や躁病症状における症状と抑うつ症状が再燃してしまい、症状の悪化、回復に時間がかかってしまうことになります。 また、双極性障害の理解を深め、ご家族が協力して治療に立ち向かうことを目的とした家族療法があります。治療しているご本人だけでなく、ご家族も双極性障害に関する病識を身につけることで双極性障害の治療に協力していく精神療法です。 ご家族が感情的な言動をしている、病識を持てない状況があることは治療をしているご本人のストレスを増加させてしまい、症状を悪化させてしまう悪循環が生じてしまう可能性が考えられます。共に双極性障害に向き合い、治療に前向きに取り組むことで症状の改善だけでなく、再発予防にも繋がることができます。 ご家族や友人からの協力が回復の道しるべとなることができることを知っておきましょう。

おわりに

今回は双極性障害について紹介をしてきました。まとめると以下のようになります。
  • 躁状態である、軽躁症状と躁病症状と抑うつ症状の状態を繰り返す症状がある
  • 薬物療法、精神療法だけではなく日々の生活リズムを整えること、自分を知ることも治療には大切になる
  • 自分で気付くだけでなく家族や友人等が自分の精神症状について客観的に気付かせてくれる存在である
  • 自分で治療の必要性を感じる時、家族や友人等に治療を勧められた時は治療を受ける
  • 治療を焦らない。定期的な治療の機会を持つことが大切である
今回取り上げた双極性障害の症状について少しでも自分や家族に当てはまる、気になることがあれば、医療機関に相談、受診してみることをお勧めします。